Contents
こんにちは、マネートレーナーの寺島です。
先日、日経新聞に以下のような記事が出ていました。
「若い世代 膨らむ借金
昨年、年収の1.9倍 低金利で住宅ローン伸び」
https://r.nikkei.com/article/DGKKZO37024070X21C18A0EA1000?unlock=1&s=1
記事を引用すると
内閣府が総務省の家計調査などから算出したところ、家計の年収に対する債務(借金)の比率は39歳以下の世帯だと2017年に187.8%と、10年前の07年に比べて1.4倍になった。全世帯の平均は6ポイントの伸びにとどまっており、若い世代が借金を増やしていることが分かる。
中略
家計の借金は民間金融機関による住宅向けの貸し付けだけで約181兆円と全体の6割を占める。比率は過去20年間で2倍になり、住宅にかたよった構造になった。
中略
懸念されるのは、金利が上がり始めたときの影響だ。かつての住宅ローンは長い期間同じ金利が適用される固定型が主流だった。住宅金融支援機構によると、今は市場に連動して金利が変わる変動型が57%になっている。低金利が長く続くと見て変動型を選ぶ個人は多いが、日銀が大規模緩和の縮小に動けば金利が上がり、返済の負担が一気に増す恐れがある。
とのことです。
簡潔にまとめると、
昨今の金利政策(マイナス金利)、税制政策(住宅ローン減税等)によって借金することに有利な環境になった結果、若年層(39歳以下)の住宅ローンをメインとした負債比率が高まっているという内容で、将来的な金利負担増加による危険を指摘して記事を結んでいます。
住宅ローン残高を増やすことは国の政策
さて、この記事の内容を少し吟味してみましょう。
まず、39歳以下の世帯の住宅ローン増加に関して。
20代、30代は元々家を買う層で、不動産会社のメインターゲットです。
ひと昔前なら結婚をして家を買って一人前という価値観が支配的でしたし、今でも多くの人は結婚をした後、自宅購入を検討する人が多いのが現状。
国の経済面でも、不動産業界は重要なポジションを占めており国民に家を買ってもらうことで、世の中にお金を回していた現実もあります。
自宅購入は不動産投資
自宅購入は、多くの場合年収の5倍〜10倍もの資金を銀行等から借りて購入します。
これつまり、投資におけるレバレッジ。
自己資金以上の金額を運用し、テコの原理よろしくリターンを(時にはリスクを)拡大することになります。
国家経済の視点で言えば、国民が一定の時期(結婚適齢期)になれば自動的に不動産投資で自己資金の5倍以上もの資金を金融機関から借りて不動産市場へ投資してくれる。
不動産価格の維持、向上は経済的にも良いことで、もちろん株価にも影響を与えます。
ですので、国は国民に家を買ってもらいたいのです。
だから、住宅ローン減税をして住宅購入のメリットを持たせますし、つい先日この制度の延長が検討され始めました。
[参考]「住宅ローン減税延長へ 消費税増税巡り政府検討 」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36921710V21C18A0MM8000/
ということで、冒頭の記事で若年層の負債比率が上がったことは政府の狙い通りということになります。
狙い通りの結果が出て、何が問題なのでしょう?笑
正しい借金の仕方
借金には良い借金と悪い借金があります。
[良い借金]とは、
借入金利<運用リターン
[悪い借金]とは、
借入金利>運用リターン
シンプルに表現すれば上記の通りです。
例を出すと、
金利3%で100万円を借りて、6%で運用した場合、差し引き3%分の3万円が手元に残ります。(税、手数料等は無視)
これが良い借金例。
そして、借金の肝は自己資金に対してのレバレッジ(てこ)ですので、仮に手元資金が30万円しかなくて、100万円を上記のように借金して運用した場合、自己資金に対する利回りは30万円に対して3万円ですので、10%のリターンになります。
次に悪い借金の例。
金利3%で100万円を借りて、運用が全然できず0金利の貯蓄口座にお金を置いておいた場合、これは差し引き3%分の3万円がただただ金利として支払われていきます。
そして、レバレッジの話で言えば、
手元資金30万に対して3万円の金利を払うので、マイナス10%の損ということになります。この場合、100万円を借りている限り永遠に3万円を支払い続けるので、10年後には手元資金の30万がなくなりますね。
まとめると、
リターンを見込める物には借金をしても良いけれど、リターンが見込めない物には決して借金をしてはいけないということになります。
世間では、「借金」を一括りにいけないことという言われ方をされますが、説明してきたように「借金」は使いようです。
ただ、一般的には貯蓄しか運用手段が思いつかない人が多いので、基本的に借金は悪い借金となり、レバレッジ効果が逆噴射して破産に繫がるというのは間違いではありません。
ナイフの使い方を知らない子供にナイフを渡すのと一緒ですね
金融リテラシーがないまま住宅ローンを組んでいるのではないか?
ちょっと遠回りしましたが、日経新聞の記事の真意はここです。
若年層の住宅ローンが増えるのは狙い通り、しかし若者は金融機関や不動産販売業者の言われるがまま買ってるんじゃないのか?
ちゃんと、不動産の資産価値評価や不動産の価格、借入金額や金利の吟味はしているのか?
といった点がデータだけ見ると怪しいということです。
将来、金利が上がり出したらローン支払いが出来なくなる人が増えるのではないか?
いざという時に自宅を売っても残債が消えない人が多いのではないか?(これは購入した不動産の資産価値が低い場合に起きる。田舎の一軒家とか顕著)
国の経済面に置いて若年層の負担が巨大なのは、他の世代間格差に関する統計からも指摘されていることですし、今現在も若年層の借金(未来の支払い)によって支えている経済であるかもしれないという見方も出来ます。
収入が中々上がらず、日々の生活費にもクレジットローンや消費者金融を気軽に利用する人が増えている昨今、若年層の負債比率の増加もそうですが、根本的な金融リテラシーの欠如は後々大きなリスクになる可能性があります。
有意義なお金の使い方を
若年層が借金をすることは、将来の時間を買うことを意味します。
今、手元にお金がないけれど借金をすれば手に入る。
この利便性を私は否定していません。
自宅購入も、経済的な面からのみの評価はできないでしょう。感情面、若いうちから設備の良い家に住めるメリット、色々な面があります。
しかし、買い物のベースには金融リテラシーによる評価があっての判断が将来的に危険の少ない判断になるでしょう。
いくら気に入った不動産が合っても、支払い切れるかわからない住宅ローンを利用しての購入は危険です。
更に、今後金利上昇局面を迎えた時に破綻しないか?の評価もしないで住宅ローンを組むことは、今はギリギリ払えても、将来首が回らなくなる可能性があります。
「よく分からないから不動産屋と銀行にお任せ〜」
では危ないということです。
彼らにとっては目先の売り上げが全てであり、私たちの幸せを本当の意味で考えてくれる人達ではありません。
不動産屋も銀行も保険屋も自分たちの手数料が第一。
彼らがプランを立ててくれたから大丈夫ということではないのです。
知らないうちに損をしていたり、危ない目に遭わないためには、自分でお金に関する知識を持ち、判断できるようになる必要があります。
冒頭の日経新聞の記事は、そんな人が少ないのではないか?何も考えずに借金を膨らませて将来危険なのではないか?という指摘をしているのです。
是非、これを読んでいる人は「悪い借金」ではなく、「良い借金」をするように自分で知識を持ちましょう。
お金をコントロールする力は人生をコントロールする力です。
記事下に、そんな金融リテラシーを鍛える無料E-bookを配布していますのでご興味ある方はご自由にダウンロードしてください
それでは、また!