こんにちは、マネートレーナーの寺島です。
今回は、多少財務の視点も交えた職業による投資適格性についてのお話。
さて、世間の認識では公務員と外資系エリートサラリーマンは全く違う人種と認識されているように思います。
外資系エリサーと言えば、優秀で高収入、世間の情報にも敏感でオシャレ、そして仮想通貨や不動産投資をはじめとした各種金融投資にも積極的。
一方で
公務員と言えば、保守的な秀才タイプ、世間の動きはあまり気にせず前時代的なルール遵守、変化は苦手で新しいことにも慎重、投資などよりも堅実な貯蓄が好き。
このように、イメージとしてはほぼ真逆の人種(個人的観測の範囲内のイメージであることを断っておきます)
一見、投資などにも外資系エリートサラリーマンの方が適性がありそうで公務員の方は下手に投資なんかに手を出したりしたら失敗しそうですが、本当にそうでしょうか?というのがこの記事で書いていきたいところです。
Contents
職業の特徴
議論が複雑になりかねないので、まず論点を分けようと思います。
上記で主に指摘したそれぞれのイメージは、それぞれの「性格」や「気質」についてです。
しかし、この記事でメインに論じたいのはそれぞれの職業の特徴と財務的なお話について。
つまり、性格や気質からは外資系エリートサラリーマンの方が投資に積極的であるし、そのリスク選好度から投資でも成功しやすいかも?という話はあまり考慮しません。
実際に投資で成功する人間かどうか?ということよりも、職業的に投資に適格性があるか?という点をこの記事では言及していきます。
ということで、外資系サラリーマンと公務員という職業的な特徴は端的に以下のような感じになります。
- 外資系=稼ぎは多いが不安定 公務員=安定して中流の収入維持
シンプルですね。
事業安定性と自己資本という視点
個別株投資を行う際には、企業のビジネスモデルや財務状況を分析して割安度や市場超過リターンを狙えるか?などを考えるのですが、その時に事業安定性というものも大きく注目するポイントになります。
いわゆる不況耐性とも言われるものですが、一般的に分かりやすく言えば十年後二十年後も同じように安定して稼げるか?ということですね。
では、なぜ個別株投資においてこの事業安定性について注目するのか?
その理由の一つは、ファイナンスのし易さにあります。
それは、翻って「通常時に待機資金を積まなくて良い」という大きなメリットにつながります。
これは、ちょっと難しい言い方をすれば総資産に対する利益率(ROA)が良くなるとも言えます。お金を 無駄に遊ばせておく必要が無いということですね。
待機資金が沢山必要な場合は、資金効率が悪い
少し上記の表現では、分かりづらいと思いますので分かりやすい例で説明しましょう。
例えば、
あなたが一発屋芸人だったとします。
今は色々なところから引っ張りダコで、休みのない大忙し。
収入も先月は150万円ももらいました。このまま行けば年収は2000万円近くはいく計算。
さて、ここで二つの道があります。
- A 突然手に入れた大金で気が大きくなりその勢いで1000万円ほどの高級外車を買ったり連日パーティを開き今を楽しむ
- B この勢いは長く続かないと考え、堅実に貯蓄しておく
あなたはどちらを選ぶでしょうか?
・・・多分、堅実なあなたはBを選ぶと思います。(笑)
はい、これが先ほどの話の逆で「待機資金を積まなければいけない」という例。
一発屋芸人のように収入が不安定であるということは、いざという時に必要な待機資金を常に確保しておかなければいけないということを意味します。
そして、待機資金は投資の観点から言えば非効率につながります。
仮に、外資系エリートサラリーマンが年間1500万円稼ぐとして、彼の年間支出が1000万円とすると差し引き500万円が投資に回せるお金という計算になりますが、実際に投資に回せるお金はもっと少ないでしょう。
【参考記事】
なぜなら、外資系サラリーマンという職業は実力主義であり不安定な世界です。
いつまでその高収入を維持できるか分からない。
仮に今の仕事をクビになり年収半分の待遇で転職したとすると、(年収750-年間支出1000=-250万円)となります。
この場合、支出を抑えないと毎年家計は赤字です。
また、クビになった後これまでの激務から心身が疲れ果て、充電期間として一年間程度休んだらその年は丸々1000万円の貯蓄取り崩しが発生します。
この外資系エリートサラリーマンの場合、上記を考え合わせれば少なくとも常時1000〜1500万円は待機資金として確保しておくことが財務安全性の面から望ましいでしょう。
更に、外資系サラリーマンは各種ローンに通り難い事実もあります。(収入面の信用がない)
例えば、どんなに稼いでいても家を買おうと思った時、なかなか金融機関の審査に通らなかったり頭金を多めに入れないといけないといった不利を被ったりもするのです。
一発屋芸人が35年のローンを組むとか現実的ではないでしょう。
実態は関係なく、外資系勤務の場合も金融機関は収入が不安定という面で似た評価をします。
つまり、大きな買い物をしようとした時に自己資金が沢山必要になるのです。
将来、家や車などを買うつもりの人は、先ほどのお金とは別に更に手元に現金を確保しておかなければいけません。
「収入が不安定である」ということはファイナンス、投資の面で大きなデメリットを抱えることを意味します。
待機資金が必要ない=稼いだお金が全額投資に回せる
対して、公務員の場合はほぼ来年の収入は予測できますし、そのまま10年後の収入も高い精度で予測が可能です。
この公務員が、現状収入の範囲内で生活出来ていれば直近貯蓄を取り崩す可能性はほぼゼロでしょう。
これは極論、待機資金が要らない(貯蓄ゼロで問題ない)ということを意味してます。
財務的な面からこの公務員は、月々稼いだお金のうち生活費等々を引いた後に残るお金全額を投資に回す事も現実的に可能です。(一般的に考えるよりリスクも少ないのです)
そして、安定した収入がある公務員は将来家を買ったり車を買うなどの大きな買い物をする際も、簡単にローンが通り自己資金も少なくて済みます。
この点からも公務員には待機資金はほとんど必要ないのです。
仮に、この公務員が年収800万円で年間支出が400万円だったとしたら、差し引き400万円のほぼ全額を投資に回すことが可能。
待機資金も100万円程度あればほぼ困ることはないでしょう。
賭け金をひたすら積み増せる強さ
ということで、結論
今回のテーマである、外資系エリートサラリーマンと公務員のどちらが投資に向いているか?を財務的な面から言えば、圧倒的に公務員に軍配が上がるでしょう。
現実的な話をすれば、上記のような条件の外資系サラリーマンと公務員がいるとしたら、外資系サラリーマンは年収こそ公務員のほぼ倍の額を稼いでいますが、毎年投資に回せるお金としたら100万円〜200万円程度が良いところ。
一方で、公務員の方は収入から支出を引いたほぼ全額の400万円ほどを投資に回してもリスクは少ないということになります。
「事業安定性がある=収入がブレずに読みやすい」ということは、待機資金の有無に大きく影響し、いざという時のファイナンス(お金を借りたり)もしやすいので、余剰資金はほぼ全額投資に回せます。
更に、投資に回した資金も短期で引き出す可能性が低いので配当なども再投資出来て、どんどん複利で資産は増やしていけます。
マーケットの上下関係なく、長期で賭け金を積み増し続けられる強さはそのまま効率的な長期投資になっていき、このようなスタイルの投資は、高い確率で20年ー30年後大きな資産を築くでしょう。
「事業安定性が低い=収入がブレて読みづらい」場合は、これらが全部逆に働きます。
最悪は、一旦投資に回した資金を短期で引き出すような事態。
そのような状態では、そもそも投資をしてはいけません。
以上、
今回は、外資系サラリーマンと公務員を例に収入の安定性による投資適格性についてでした。
今回の記事の内容をものすごく簡単に言えば、
- 安定した収入の職業の人ほど投資やれ
- 高収入でも不安定な職業の人は投資を控え目に
ということになります。
しかしながら、現実は職業の選択にはその人の性格が大きく関わっていて、公務員ほど保守的で投資なんて手を出さない!貯蓄万歳!という人が多く、外資系サラリーマンほどリスク選好で無謀なトレードや投資に積極的・・・
性格や気質と、財務的な適正が両立するパターンは結構少ないように思います。
人間だもの
それでは、また